VOICE OF ROCK、その名を欲しいままに天賦の才を持ち合わせつつも、音楽的嗜好とパーソナルな問題を抱え多くの時代を無駄に過ごした男、90年代に入り再起の兆しを見つけ、精力的な活動を遂げるわけですが、ソロ作で言うならロック色が強く、それなりにメタルな耳で楽しめるのが『FROM NOW ON』や『ADDICTION 』くらいで、二枚目の『FEEL』はソウル過ぎた(しかし歌は凄かった)。わりと期待を持たせつつ外した作品が多いといわれるグレン、本人の中にあるわだかまりが中途半端な作品を作る結果となり続けたのでしょうが、今作はかなり焦点を絞った作風へと舵を切り、往年のクラシックロックに精通する筋の通った音楽性を披露。その前に行ったジョー・リン・ターナーとの黄金のプロジェクトチームH.T.P.での活動に触発された面もあるのか、魅力的なメロディを朗々と歌う姿はまさにVOICE OF ROCK降臨と思える圧巻のパフォーマンスに驚嘆あるのみ、ロック色の強い楽曲の中でも、自身の持ち味を生かしたアレンジと楽曲を用意し支えたスタッフ一同に感謝しますね。全編にわたり水準以上の楽曲がある中で、②のイントロなんてレインボーのあの曲にソックリだし⑥に漂うミステリーデッドな雰囲気にも驚かされました。こういうモノとは縁のない男と思っていたのでいやはや驚きでしたね。紆余曲折を経て辿りついたソウルフルなハードサウンド、それらは安易な70年代スタイルの模倣とは違うが、グレンの趣味全開でもない、そのいい意味でも折衷具合は、ある意味バラつきあるソロ作の中では今作が一番の出来栄えでしょう。何はともあれ、絶品の歌声に魅了されるのが一番ですかね。⑦みたいな曲をやるとは思わなかったわい。嬉しい誤算でしたよ。
2016年リリースの4th。レーベルを離れ自主制作扱いの今作。そうはなっても当然楽曲のクオリティが下がる事はなく『Out for Blood』ではサックスの音色が聞こえたりと工夫も凝らしています。扇情的なメロディ、硬質なギターと派手にドライブするリズム、そこに折り重なるビックコーラスと非常に耳馴染みの良いサウンドを披露、嫌みにならないようメタリックな要素も残しつつレジェンダリーな先人達からの影響を飲み込みつつ、安易な焼き回しで終わらない王道スタイルをしっかりと踏襲、親しみやすさやと華やかさを際立たせつつ、深みのあるメロディとメタリックな要素を両立させたサウンドは見事。どの曲にもフックのあるパートを盛り込みパワフルだが、どこか日本人の心をくすぐる郷愁さもあり、今まで以上にメジャー感も増し確実にスケールUPしていますね。攻撃的なリフとリズム、その中からキャッチーでありつつ扇情的なメロディが嫌みなく飛び出してくるんだからたまりませんよ。それにギターオリエンテッドなスタイルってのもいい。印象的なフレーズで切れ込むツインギターのエネルギッシュなプレイには清々しい気分を味わえますね。11曲入りで43分ってのもいい。それにわりとテンポの速いノリがエエ曲も多いからライトリスナーに取っ付きやすい面もあるかと思いますよ。いい意味で大衆性を纏いつつ、攻めの姿勢を崩さないバンドの心意気に胸打たれました。
MERCYFUL FATEの記念すべきデビューEP作の4曲にBBCラジオの『Friday Rock Show』から3曲、1997年にリマスター再発してくれたRoadrunner盤には新たにシングルに収録された⑧を追加しリリースされているコンピ作。どれも貴重な音源で彼らの歴史を知る上では外す事の出来ない一品として知られています。プログレッシブな展開は薄目ですが、悪魔的なニュアンスはこの時点である程度確立されており、キング・ダイアモンド氏の奇怪なファルセットヴォイスは不気味な手触りの残しています。低予算&突貫工事なレコーディングの影響もあり、妙に生々しい粗さも逆に他の作風では感じる事の出来ない魅力があり、また魔術的な響きには後の片鱗も感じさせてくれますね。
1. Doomed by the Living Dead 2. A Corpse Without Soul 3. Nuns Have No Fun 4. Devil Eyes 5. Curse of the Pharaohs 6. Evil 7. Satan's Fall 8. Black Masses 9. Black Funeral
ツインギター編成のガールズHM/HRバンドが1988年にリリースした1st。英国風味満点のシリアスなサウンドはシンプルな構成だが無駄を省きダイナミックに聴かせてくれる。そのストレートな作風を支える堅実なプレイは女性という色眼鏡で見られる要素もなく正統的なスタイルを堅守、実に頼もしい音を聞かせてくれます。十分パワフルだし地に足がついたパフォーマンスは好感も持てる、あとはキメの一曲があれば良かったのですが、そこがチョイと弱いですかね。8曲入り32分、イギリスの『Music for Nations』からリリースされただけのクオリティは備えていますよ。ちなみギタリストのリナ・サンズはジョン・ペトルーシと、ベースのリサはジョン・マイアングと、ギターのマレーネはマイク・ポートノイといずれも結婚するという離れ業を成し遂げています。ある意味究極のあげまんバンドですかね。