南米はチリの『Austral Holocaust Productions』からリリースされたコンピ作。アナログのEPをCD化したものなのですが、楽曲は既にフルアルバムにも収録されていたりとダブっているのですが、SAMMこと舘真二さん参加のIron’ Steel’ Metal 、Heavy Metal Hunterの2曲が貴重なデモ音源らしく、そこが最大の聴きどころでしょう。メタルシファーのファン以外に食指が進むかと言われると微妙なんですが、日本が海外に誇るレジェンダリーなバンドで国内のみならず精力的な海外でもツアーを行い、マニアの間では世界でも名の知られたバンドなのです。それでなければチリからリリースされる事はないでしょう。アルバムジャケットから発散されるオフザケ感も程々にメタル愛溢れる一枚、哀愁のツインリードにむせび泣き、和製NWOBHMサウンドに触れて欲しいですね
引き続きプロデューサーにディーター・ダークスを迎え1983年にリリースした2nd。今は亡きアリスタからリリースというビックディールを獲得した影響もあるのか、メタル度は上がったが明るめのご機嫌なノリの曲も増えタイトルトラックの④などは無理やりなメタルナンバー放り込み幅広い楽曲を用意、個人的には中途半端な明るさやメジャー感覚を放り込むならラスト3曲くらいの流れでやってくれないと厳しいような感覚にとらわれるのですが、前作の流れを考えると微妙ですかね。けして器用なバンドではないと思いますが、方向性の拡散がメンバーチェンジを誘発し解散の一途を辿るのですが、この時代ならではの大衆性とゴージャスに決め切れなかった音楽性の響きはオールドというよりはアンティークと言いたい味わい深い輝きがあり、ある意味、早すぎた音楽性とも言えなくもない。そんな彼らにとってはらしくないかもしれませんがラストのBaby We Can Talkなんてアルバムを締めくくるのに相応しい感動的なロックアンセムかと思いますよ。
ドイツ産ツインギター編成の5人組が1989年にリリースした1st。サウンドは同郷のパワーメタルの雄ランニングワイルドに近いスタンスをとっており、向こうが海賊をコンセプトならこちらは中世ファンタジーな世界観を感じさせる音楽性を披露、抒情的なフレーズを歌いあげる愁いのある歌声は、線が細く不安定な印象を受けるが、疾走感溢れるパートを盛り込み、その攻撃性を損なわずともフライングするロマネスクがファンタジックな雰囲気をまとい、拘りの展開も用意となんとも言えぬ味わいを醸し出しオリジナルティをアピール、綺麗なメロディを奏でるギターもハマると魅力も倍増なんですが、凡庸な歌メロとリフワークに迫力不足の低音、リズムもやや不安定と気になる面もありますが、『Dream of Love』では女性シンガーとデュエットしたりと工夫を凝らしているのが面白くもあり、メジャーキーをぶち込みコミカルさを演出するスタイルやジャーマン七三分けパワーメタルとはチョイと趣の違う音楽性は意外と個性的ですね
NWOBHMを象徴するような幻のコンピレーション作Metal For Muthas Vol. 1に楽曲を提供している事でマニアからも知られるバンドが1980年に残した唯一のフルアルバム。脆弱なサウンドプロダクションが醸し出すペシャンペシャンのシッケシケなスッカスカのボロンボロンの味わい深さにマニアなら咽ぶこと間違いなし、コンピにも提供した⑥が醸し出すあの空気にNWOBHMマニアを自負する方なら立ち上がらずにはいられなくなるでしょう。この時代の英国産バンドでしか味わえないジメジメとした湿度の高さ、全体を覆うモヤっした空気と煮え切らないあのメロディ、もう少し演奏にメリハリがあれば印象も変わるのにと嘆きたくなるのですが、実はそこが初期NWOBHMバンド群の魅力とも言えるので、間違っても洗練された一線級のバンドや評論家の美辞麗句が踊るライナーノーツ付きの作品を主力として楽しみ崇めれる方にはおススメできませんが、我こそはと道場破り感覚でモノ申すツワモノにこそ、おススメしたい一品ですね。
知らないうちにヒッソリとリリースされた印象が強いドッケンと言うバンド体制ラスト宣言もされた2012年のアルバム。(商店街にある何年たっても閉まらない量販店の閉店セールかと思ったら今のところ本当にリリースはないみたいですね)熱心なギタリストならジョン・レヴィンのギターが余りにもジョージしすぎて気になるなぁと不満も覚えるし、衰えを隠せない主役たるドンの歌声も新鮮味がない、気になる事だらけだったりしますが、①②と往年の空気を纏った曲でアルバムの幕が開け往年のサウンドを期待するファンにとってはマズマズのスタートとなる。個人的には③のようなヘヴィなリズムに厚みのあるコーラスを設けて、扇情的な哀愁のメロディを歌う曲こそドッケンと思っているので逆に無難に置きにいった①②が『Erase the Slate』同様のニュアンスがあり、少々のめり込めないのが一番難点だったりします。③以降ドッケン節を搭載したヘヴィかつメロウなミドルナンバーが続き、曲調的にもモダンな時代を含め、今までの集大成的なニュアンスを抱かせ、地味な印象を拭えませんが、ジョン・レヴィンの今風の洗練されたギターは聴き応えがありますね。往年の攻撃的なギターに絡む甘美なメロディを期待すると厳しいし、そもそも即効性の高い曲も用意されていません。黄金期を知るファンや、かつての音楽性を求めるファンには厳しい作風だしラストアルバムと言われると尚更感慨深いものもこみ上げますが、でもサビメロなどはやはりドッケン節だ。個人的にも曲順やもうチョイ分かりやすい曲を放り込むんだ方が取っつき易い、眠気も誘発しないのにと残念な気分に浸る事にはなりますが、一曲の完成度はけっして低くはなく景気付けに①②を聴き③⑦⑧⑨⑩⑪あたりは割と摘まみ食いしたくなる佳曲ですね。
NY出身の5人組によるEPが今年に入り復刻、元は4曲入りでしたがCD化に伴い、あのMausoleum Recordsからリリースされたオムニバス『Metal over America』から2曲プラスにデモ2曲追加の8曲入りで2016年2月にリリース。ずっと忘れていたバンドだったのですが、今から4~5年前に懇意にいしていた貴重なメタル仲間から『タカハシ復活したぞ』と一報が入る興奮しすぎてタカシをタカハシと言い間違えるくらいのビックニュースなのかは分かりませんがドエラいテンションが高かった事を思い出します。そして何の復活だったのか?今持って知る由もないのですが、数年後こうしてこの作品がよもや世に出るとは…共有できるツールが増えた副産物の成せる技なのか恐ろしい時代になったなぁと感慨深いものがありますね。誰も知らんし誰が買うねんである。復刻に合わせ久しぶりにオムニバスを引っ張り出し『Kill Or Be Killed』を聴いたのですが、紹介文にあったヴァージンスタイルロックという文言に、そんな音楽性だったかいなぁと思いを馳せながら購入を決意。その成果はマイナーメタルもマイナーな世界観、ボン・ジョヴィ感覚で付けたのかタカシというバンド名、そのオフザケ感とは裏腹な見た目はグラマラスなんですが、意外と硬派で真っ当な音楽性に、なんとも言えぬヌルッとした感覚を味わう微妙な空気感の一品。平坦な音質のせいもあるがフックに乏しい歌メロと単調なリフワークとリズムなど片目閉じて聴い貰わなんとイケないような作品なんですが、マイナーメタルマニアの血が騒ぎ、こんな所が好きだと、マイナス部分よりも自分の好みに合わせアジャスト出来るストライクゾーンの広さに恨み節も出ます。行列のできる名店に並び、せっかく食べる機会に巡り合わせたのに、定番メニューを外すヘソ曲りな真のカブキ者を自負する猛者限定の一品ですね。
北欧はスウェーデン出身、コニー・リンドとピーター・ブロマンの二人によるプロジェクトの1st。北欧ならではの透明感あふれるメロディとコニーが籍を置いていたGreat King Ratなどにも通ずるブルージーさも程良く溶け合い見事に融合を果たしAOR系の歌モノハードサウンドとしては良質な部類に入る一枚です。プロジェクトにありがちな手作り感と打ち込みのリズムに、やや軽めの印象を受けますが職人肌の良く歌うギターも良いし、叙情味たっぷりの哀愁のメロディは、やはり聴いていて心地が良い。少々類型的なスタイルの曲なれど上手い歌と良いメロディがあればそれど良いと素直に思える方には強くおススメしたいですね。厚めのコーラスワーク、北欧独特の甘いトーンをエモーショナルに歌いきる姿は実に心に響きますね。北欧のAOR系バンドはクオリティが高いわ。
1. Gods Gift to Women 2. You Say You never Cry 3. Help Me Through the Night 4. Tough Ain't Enough 5. Fairwarning 6. Your Lover Your Friend 7. It Seems So Hollywood 8. Next Train Back 9. Love Is Like a Fire 10. You Can't Hide 11. Fever 12. I Dream Long Distance 13. Tell Me Why