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Song for America / Song for America / KANSAS
DUMB APPLE ANDERSON ★★★ (2005-08-15 05:22:33)
アルバムタイ10分3秒という長さを持っていながら、それに耐えうるだけの劇的な構成、ライトな爽快感、そして知性を持っている。「アメリカに捧ぐ歌」とでも言うべき題には重みがあるが、(一般リスナーでさえも)あまり身構えずとも聴き通せるので全く問題なし。
構成は大別すると、0:00~3:02のイントロとなる第一部、3:03~3:57の第二部、3:58~5:09の第三部、5:10~8:36の間奏となる第四部、そしてそれ以降の第五部となる。(これはあくまで便宜的な分け方なのであまり気にしないでね)
第一部では移民がアメリカを見つけるまでの様子を描いたような激しい展開を見せる。イントロでここまで素晴らしかったら、それに引っ張られて先を聴きたくなるのが人情であろう。
第二部では移民がまだ見ぬアメリカの美しさを歌う。「ここにはすべての命があふれている」と形容されている美しい自然は、人々の理想郷のイメージだろうか。
第三部では人々がアメリカにたどり着き、自由を求めて人々が壊れる様が描かれる。「破壊も略奪も驚くことじゃない 強姦に殺人に蹂躙 木を切り倒し、掘り返し……」というくだりがとても印象的だ。
第四部では再び劇的な展開を見せるが、これが人間の所業を表すものか否かはいまいち分からない。だがこうしたインストパートにも人を引き付ける魅力があるのもまた事実だが。
第五部ではアメリカの現在の姿が歌われる。結局自然を破壊しこの地の支配者となった人々が「新たな夢の地を追い 再び苦しいレースが始まろうとしている」と言うのは実に皮肉な響きがある。そして曲は長い後奏の後フェード・アウトしていく。まるで終わりなき苦しいレースを暗示するかのように……。
こうして聴くと、非常に聴き応えがあると共に、非常に身につまされる曲である。“Death Of Mother Nature Suite"のように環境破壊を題材にしている所為だろうか。これも“The Wall"等のようにメッセージ性が強いが、それでいて全く重くないのは流石である。
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