この曲を聴け! 

The Musical Box / Nursery Cryme / GENESIS
Straysheep ★★★ (2005-07-26 00:25:12)
I'm so young and you're so old. [ Paul Anka作 : Dianaより ]
本作は1971年年頭に大ヒットしたトム・ジョーンズの「She's A Lady」に触発され、
その作者であったポール・アンカの代表作「Diana」の歌詞と、
その背景にあるエピソードをモチーフにして作られたジェネシスなりのラヴソングである。
そこにスコットランド童謡「Old King Cole」と、スコットランドが本場でもある幽霊伝説を
上手く絡めてユーモラスに表現したものが本作。
最高のメンバーが揃い、ジェネシスの魅力が十全に発揮された何とも魅力的な楽曲である。
楽曲中の主人公は同じ保育園の年上の女の子に恋をする。
しかし彼女は彼が年下だからと相手にしてくれない。
失意に暮れて死んでしまった彼だったが、
もし自分が彼女より年上になれば、彼女は自分に振り向いてくれるんじゃないかと思いいたる。
そして彼は幽霊となってマチュアーな紳士に生まれ変り、再び彼女の前に現れることとなる。
彼のオルゴールから流れる「Old King Cole」のメロディーに乗って、
生まれ変わった彼が、ヒゲをたくわた紳士の姿で現れる。
何が何だかわからない彼女に向かって紳士はこう叫ぶのだ。
Why don't you touch me, touch me ・・・now now now ! と。
恋焦がれた彼女・・・僕に触れて欲しい。そうしたら思い切り抱きしめられるのに・・・
しかしそんな彼の願いは、駆けつけたベビーシッターに邪魔をされ
永遠に叶わぬものとなってしまった・・・。
ピーター・ゲイブリエルの、主人公になりきった迫真のヴォーカル。
前出歌詞の部分では、勢い余って声が裏返ってしまっているほど。
マーヴィン・ゲイの「Distant Lover」を彷彿とさせるくらいの熱い歌唱である。
ラヴソングならではの「熱さ」に、聞くたびにホレボレとしてしまう。
もちろんバックも熱い演奏で応え、アレンジ、トーンの選び方、
そして歌詞と一体となった自然なメロディそのものも、文句の付けようがない完璧な出来映え。
とはいえここでは、バンドが一つにまとまった一体感こそが何より素晴らしいと思う。
ジェネシスの長い歴史の中でも、これほど全てが高い次元で一つになった作品は少ないのでは?
本作の印象に「怖さ」とか「怪しさ」なんて全くない。むしろユーモラスであるとすら言えるだろう。
ジェネシスは非常に誤解の多いバンドであるが、流言蜚語に惑わされず、
リスナー自身でライナーに記載された歌詞とキャプションを(原文で)きちんと解釈すれば、
本作の、ひいてはジェネシスという存在そのものの拠って立つところが自ずと理解できるかと思う。
本作は、私の愛するジェネシスの楽曲の中でも、とりわけ愛着の深いナンバーである。
→同意