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Burning Bridges / ARCH ENEMY
電動親父 ★★ (2006-05-06 06:49:00)
デスメタル界広しといえどココまで狂気と叙情性に満ちた音楽を作る希有なバンドはそうはいない。
勿論ブラストビートを多用したり、プロダクションにより
轟音を鳴らしまくるデスメタル作品は世に星の数ほどあるだろうが、
耳から聴こえる表面的な音圧がでかければいいってものでもない。
如何に人に作り手の気持ちを表現できるか、如何に感動を与えられるか、
如何に聴き手を曲の世界へ引きこめるかが重要である。
そういう意味では正にこのBURNING BRIDGESは5人のメンバーが
魂を削りながら紡ぎ上げた「慟哭の結晶」であると言えよう。
JOHAN LEEVAのボーカルスタイルはいわゆるデス声ではない。
デスメタルアーティストとしては賛否両論分かれるところだが、
これが叙情的表現には似合ってて、その内臓まで吐き出しそうな怒号は
ギャアギャア騒ぐだけのデス声とは存在感が天地の差である。
その張り詰めた緊張感と吐き出しまくる洪水のようなアドレナリンを伴い、
鬼気迫る轟音はゆっくりと動き出し、激流と化して一瞬の隙も見せぬまま
冷たく悲しい旋律を渦に巻き込み最後まで爆走する。
1曲目からこれ以上無い迄テンションを上げ、怒涛の破壊力を見せ付けるTHE IMMORTAL。
イントロからハンマーでがんがん頭を撲られるかの様な衝撃だ。
その攻撃的で重厚な轟音の壁を前にしては熱さ、息苦しさすら感じてまともに立っていられない。
喉が壊れそうなくらい怖ろしい迄に怒りに満ちたJOHANのVOCAL。
狂気を伴いながらの凄まじい咆哮だ。
しかしメインは中盤のCHRISTOPHERの限界ギリギリのテクニカルなギターソロ。
まるで台風が町を壊しながら成長する様にうねりながら凄まじい勢いで弾きまくる。
どんどんヒートアップして曲が終わった頃には焼けたエンジンが熱を残している様だ。
一転SILVER WINGは実に爽快。
天空を飛び回る様な印象のこの曲はデスメタルの革命と言っても過言ではない。
哀愁メロディだけでなく純粋な美旋律は彼らの得意とする独自のスタイルであり、
DEMONIC SCIENCEでもそれは聴く事が出来る。
日本版にはEUROPEのカバーも含めてボーナストラックが2曲入っているが
いずれも本編に肉薄する素晴らしい内容だ。
特にFIELDS OF DESOLATIONの再録は甘美なツインリードによる究極の様式美でフィナーレを迎え、
壮絶な悲哀を演出しており寧ろこの1曲は本編を超えてるかもしれない程の感動だ。
しかしアルバムとしての様式美を追求する中で、できればこれらは中盤に挿入して欲しかった。
ヘヴィチューンBURNING BRIDGESの事切れる様な絶望的な終焉が、
このアルバムの最高の激情を演出していたと思うのだ。
ここまででも読み辛い行数になってきているし、
1曲1曲コメントしてるときりが無いので程々にするが、
このアルバムはそんな彼らが作った最高傑作であり、ARCHENEMY史上、
そしてMICHAEL AMOTT史上最もブルータルでヘヴィでダークなアルバムだ。
JOHAN LEEVA、CHRISTOPHER AMOTTが在籍していた絶頂期に最高峰の技術を以って作られた歴史に残る1枚、
世界を震撼させる1枚あり、今後恐らくこれを超えるアルバムを作る事は限りなく不可能に近いであろう。

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