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Thunderbolt / SAXON
失恋船長(2018-03-01 03:43:30)
最近はコンスタントに作品をリリース、積極的にツアーを行い精力的な活動を継続する、ベテランバンドの熱い心意気が詰まった最新作がコチラ。作風としては近年にないくらいオーセンティックな作風を貫いており、ここにようやくアンディ・スニープとバンドの特性が合致。初期の頃の音楽性を現代にアップデートした作風は多くのファンの期待に応える出来栄えでしょう。よもや、このようなスタイルを2018年に叩きつけるとは驚きです。ギターリフ一つとっても正統性への純度の濃さを証明するようなキレもあり、懐かしも倍増ですかね。今まで以上にタイトに締め上げたリズムプレイも印象的だし、このあたりの作り込も徹底的に無駄を排したと言うことでしょう。
また楽曲もコンパクトにまとめたものばかりで、楽曲の半分以上が3分代というシンプルな構成に拘っているのも面白い。新しい面もあれど、今作はそれまでのへヴィネス路線とは一線を画した方向であり、2018年にクラシックメタルへの在り方を示した一枚とも思え、こういう方向性に進んだのを、前向きなのか、後ろ向きと捉えるかで評価も別れるでしょうね。

新旧の魅力を巧みに織り交ぜは②③④の流れは確かに素晴らしく、アルバムのハイライトと言える展開となっており、その為に後半が地味に映るとも言えるが、レミー・キルスターに捧げた⑤で多くのファンの涙を誘い、グロウルパートも挿入した⑥のクールなのに焼けつくようなへヴィグルーブのカッコよさに悶絶。英国的威厳に満ち溢れた⑦と続きエンディングへ向けて盛り上がっていくのですが、お約束のようなスピードナンバーが凡庸に映るのが残念(焼き回し感もね)。その合間に挟まれる⑨や⑪の出来が良かっただけに余計に気になりますね。こうなると衰えを隠すように、がなり立てるのもビフの歌声もチョイとね。

なんだかんだ言いましたが、個人的には、ここ数年のSAXONは動けなくなったベテランレスラーみたいなもんです。回りの若手が色々と仕掛け成立さえているプロレスの試合です。それだけに星は伸ばせませんが、天龍や長州がリングにいればよいというマニアには常に満点でしょう。こういう大味な作風は止めて、昔のようなバイカーズ路線も聴きたいのが本音。10年は手を変え品を変え、このスタイルをやっています。アメリカンナイズド時代よりもたちが悪い気がしますね。言い訳できないもん。

ここからは余談ですが、SAXONはこの最新作を引っ提げ、同じく3月に新譜をリリースJudas Priestと共に大規模な欧州ツアーに出かけます。そのJPも先行で公開されている楽曲が、随分と過去をイメージさせるものだった。JPはロブが復帰した時に、昔のアイデアを生かしたアルバムをリリースしているし、ロブ・ハルフォードも名盤レザレクションでシーンにカムバックした実績があるから、気にはなっている。最新作はセルフパロディになっていないかは大いなる問題だが、それ以上に感じるのは、2018年はHM/HRシーンにとって一つの潮目を迎えそうだ。
LOUDNESSの最新作も想像以上に古典的なスタイルに回帰していて驚いたが、こうなると腑に落ちる。そういえば昨年リリースされたMETALLICAのアルバムも随分と古典的なものだった。春にリリース予定のRIOT Vの新譜もTHNUDERSTEEL路線らしい。2016、2017年と国内外を問わず、ビックネームの原点回帰サウンドの乱発に驚いています。その流れの中でSAXONとJPが欧州で大規模なツアー、これはシーンにとって大きな変革をもたらすこといなるのかも知れませんね。

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