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Korn / KORN
絶叫者ヨハネ ★★ (2006-02-16 23:43:00)
わりとKornリアルタイム世代にもかかわらず、耳にしたのは何故かつい最近。どうもブームの波が十年ほど遅れているようです。しかしトレンドの風見鶏に「Kornの時代は終わった」などと囁かれる今だからこそ、かえって彼らの音楽の真価が判るのではないのでしょうか?

スタイルとしてのモダンヘヴィはかなり苦手なのですが、彼らの場合は独特の真に迫った空気とセンス抜群の演奏陣のおかげで退屈することなく聴けます。乾いた隙間の多い音像のおかげで、各人の出している音が際立っていて、一つ一つの音に存在感ありありです。普通はまず全体としての曲が先に聞こえ、そこから個々のパートの音へと耳が向かうものですが、彼らの場合、個々の音が先で、それが重なって後で曲になる、という感覚なのです(聴こえ方からいうとジャズっぽい?)です。
演奏のみなさんもセンスあふれるプレイを披露しており、特にリズム隊は素晴らしいの一言。本当に一音も聞き逃せません。素人でもハイハットの音を聴いていて楽しめるなんていうドラマーは、尋常ではありません。

また楽曲のトーンが本当に独特。「暗い」「絶望的」というより、ひたすら「不穏」で「脅迫的」な感覚が立ちこめています。何かに追われているような感じなのです。まるで○○恐怖症の人が運悪く最悪のシチュエーションに陥り、半ば狂乱状態になりながら必死で平静を装おうともがいているような切羽詰った雰囲気です。ジョナサン氏のVoに至っては屠殺される子羊の憎悪と呻きのような苦々しさです。「俺は虐げられたっ、踏みにじられたっ、嬲(なぶ)りものにされたっっっっ!!!!!!!!!!」と叫び続け、必死に破壊された自己の尊厳の修復に励んでおられます。

やはり彼らは本物です。単に彼らのスタイルを盗用するばかりのフォロワーたち、梅雨時のキノコのように繁殖したその他大勢とは比べものにならない、真剣さと切実さ。
「負の力(ダークフォース)」に満ちた音楽であり、間違っても「聴き手の魂に忘れえぬ感動をもたらす」ような類の作品ではありませんが、どうしようもないネガティヴさの中にも共感を呼ぶのが魅力。
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