この曲を聴け! 

St. Anger / METALLICA
クーカイ ★★ (2003-06-08 16:29:00)
・・・。さて。何から書こうか。
まず、私は彼等のファンであるが、あまり深い思い入れを持たずに各作品に接している。コアなファンから見れば非常にいいかげんな奴である。なにせ1stから3rdまでの一連の流れを愛しつつも3rdを溺愛してはおらず、プロダクションに難がある4thの価値も認めている。BLACK ALBUMに対しても、非常に複雑な屈折した思いを抱きつつも決して嫌いではない。好きだ。『LOAD』以降の流れに関しても、空洞化したHMのど真ん中をMETALLICA流のやり方で埋めようとしたことに好感を感じている。『LOAD』・『RELOAD』で唯一気になったのは曲の長さと収録曲の多さぐらいだった。
こんな人間が書いているんですよ。というのを前提にして読んでほしいのだが、今作は問題作でありつつ大傑作であると思う。
なにが問題か。それはやはりサウンドプロダクションだ。特にスカタン、スカタンとやたらと軽々しいドラムの音は気にならないといったら嘘になる。ただ、それは作り手の方では確信犯的にそういう音を狙っているのであり、生々しさを増していると言われればそれも肯首し得るものではある。もう一つの問題は徹底的に練らなかったアレンジである。いや、この言い方はおかしいな。要するに作りっぱなしなのだ。ただし、上の方でどなたかも仰っていたが、アレンジがこれまでのように練られていないにも関わらず、長い曲でも飽きずに聴ける。これは凄いことだ。アルバムのトータルランニングタイムにしてもかなり長いのだが、聴き始めればあっという間だ。つまらないとすぐに眠ってしまう私がだ。これも凄いことである。
今作の作風は、これまでの作品のどこかに戻ったものではない。ましてや総括などでもない。あるのは初期衝動のみ。ロックの初期衝動のみだ。
売れたい音では決してない。それどころか売れようが売れまいが全然お構い無しだ。「やりたいようにやる」というのを具現化した作品であり、ここ数作で時折見られた妙な余裕もない。だから大傑作なのである。こんな作品は彼等にしか作れない。彼等ほどの大物がやろうと思えば出来てしまうが、いままでにどんな大物バンドだってやらなかった。今作はそういう作品である。
待ったかいがあった。そうじゃないか?

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